映画「この世界の片隅に」感想
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“この世界の片隅に” 見てきました。
転載先 : 実名公開しているnote記事
「この世界の片隅に」
感想: 「そこに人の人生があるというリアル」がもの凄く伝わってくる
押しつけがましい表現がなく、淡々と描かれているのに、 「そこに人の人生があるというリアル」がもの凄く伝わって くる作品でした。
圧倒的な調査と思考を背景にしつつも、それをひけらかす ことなく、主人公の視点で再構成され切り出された日常、 それが突然破られ、それも飲み込もうとした途端に 前提が崩され、それでも、また日常を生み出していく、 人間のホメオスタシスを感じさせる力強い作品でした。
とにかく、感じることが大事、と思える作品です。
(それこそアナ雪とか、大抵のヒット作は出てくるあらすじとか 想定顧客層で「見なくてもだいたい分かる、答え合わせに見に いく」作品ばかりなんですが、この作品は、もし分かって いたとしても「答え合わせではなく、感じたい」作品で、 見に行って、やっぱり感じて良かったと思える作品でした)
直接作品に関係しない感想
戦争の悲惨さへの気づかせ方
「戦争は悲惨だ!悲惨だ!悲惨だ!」ってやり方は やっぱり人の心には深く残らないですよ。ねぇ。 「帰ってきたヒトラー」でも思うけれど、自分で 体感させて、はたと気づかせるのが良いと思うのよね… そういう表現が出来て、表現が受け入れられてる間は、 まだ日本は大丈夫、と思いたい…
片渕須直監督の姿勢
片渕監督のこの姿勢、以前にも読んだことありますが、 僕は好きですし、そうありたいな、と思ってることです。
Source: WEBアニメスタイル β運動の岸辺で 第134回 空を飛びわたるものの夏
何か具体的な物事を考えるとき、表面的な事象だけをいくつか 蒐集して何かを述べるのではなく、うーんと裾野を広げて全体 像を眺めて、その中からコンテクストを読み取って、はじめて イメージを得る、という方法論
日本のアニメは相変わらず家内制手工業
今回の助監督の浦谷千恵さんは片渕監督の奥様ということで、 スタジオジブリにしてもそうだけれど、相変わらず日本の アニメって家内制手工業で宮大工で辛い…とは思うところ。 そういう観点からは、エンタメ産業として近代化しようと している庵野秀明とかも(リメイクばっかりなのは好きじゃ ないけれど)応援はしているわけです。あと新海誠も ぜひ名作の作家になって頂きたく…
とはいうものの、片渕監督のこの作風、おそらく「消費される 娯楽」には向かない(勿体ない)んですよね…
この作品は上手く世界に知られて欲しいし、その収益が適切に 還元されて次の創作に繋がって欲しいんですが、だからと いって「適切な商売」のために片渕監督の時間が取られる のはもったいないなーという思いもあります。
参考資料
1. NHK「花は咲く」アニメ
NHK「花は咲く」アニメ(http://www.nhk.or.jp/ashita/themesong/anime/) は、本作原作の こうの史代 がキャラクター原案をしていて、両方とも片渕須直が監督をしているという共通点があります。
2. Acecombat04 ストーリーパート
私がはじめて触れた片渕作品です。
必死になってライバル機を撃墜した直後に感じる寂寥感、切なさはこのストーリーから出てきていて、当時も深く感じ入ったのを覚えています。
いまソフトの入手は困難ですしプレイも大変なのでYoutube動画を参照ください。
そして寂寥感って、作り手の狙いどおりだったんですよね…
Source: WEBアニメスタイル β運動の岸辺で 第137回 笑わず、背を丸める
なんとなれば、自分たちがサイドストーリー的に 付け加えている映像は、ゲーム全体から見れば、 いわゆるラスボスに徹底して感情移入させるための ものなのであり、「それを倒す」ことをゲームする人に 強いるものなのであるのだから。最終局面では、発射 ボタンを押すことに快感が伴われず、ある種の切実さを もってそれに代えるということになってしまうのかも しれず、その先に待っているものがあるとしたら、 いったいなんなのだろう。